今年のアカデミー賞で最多受賞となった、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」

やっとのことで公開されたので、この水曜日にユナイテッドシネマ札幌で観てきた。

今日はその話に加えて、この映画がきっかけで思い出した昔の上司の話も書くことにしたい。

(ネタバレはありません)



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2024040601


平日朝イチのIMAXシアターは、公開したての超話題作とは思えないほど観客がパラパラ。

おかげで真ん中近くのベストシートを確保できて、私にはよかった。


いつもなら映画の感想をネタバレなしでぼやーんと書くところだけど、今回はやめておく。

なぜなら…難しかったから。

私のスポンジ脳では、目の前を流れていく映像を処理するだけで必死の3時間だった。

これ、結構ノーランあるあるで、他の監督の映画ではあんまり起こらない話。

最近の映画(特に邦画)は、後出しで回想シーンを挿入したり、なんでもかんでもモノローグにしたり、辟易するほどわかりやすい。(ほめてません)

私はセリフや回想に頼らず、ちょっとした仕草や絶妙な間、意味をこめたカットやモンタージュ、比喩・暗喩を多用してくれる映画の方が好きだ。

答えを全部見せられるより、想像力で行間を埋めていった方が何倍も感動できるからね。

ただノーラン映画のわかりづらさは、ちょっと次元が違う。

ひとことで言うなら、天才の所業は凡人には理解しづらいということ。

芸術的で難解な映画はたくさんあるけれど、ノーラン映画は頭よすぎる人が作っているからついていくのが大変なのだ。

もちろん話自体は理解できたし、見ごたえがあったことは言うまでもない。

私が感じたのは、シーンひとつひとつに要求される理解力の恐ろしいほどの高さ。

私が必死でスクリーンを見つめて頭をフル回転させて「これってこういうことだよなあ」と解釈した場面も、ノーランにしてみれば説明は必要十分であり、これ以上わかりやすくする必要はないと考えているはず。

すべてのシーンがそんな天才レベルで作られており、とてもじゃないけど簡単にわかったふりなんて私にはできない。

映画全体の流れと着地点を知っている今もう一度観れば、天才の意図するところがもっと理解できるだろう。

でも、初回は厳しいわー。



私がそんな感想を持ったのは、サラリーマン時代によく似た経験をしているから。

23年の会社人生の中で唯一「この人の頭には絶対にかなわない」と思った上司がいる。

1年間お世話になったその人をY部長としておこう。

Y部長から仕事の指示を受けるのだが、最初はそれがよく理解できないのだ。

「指示の仕方が下手くそすぎ!」と初めのころは思っていた。

よくわからないまま仕事を進めて、「こんな感じかな」というものを持って報告に行くと、まあけちょんけちょん。

げんなりしてやり直すんだけど、どこがダメなのかもよくわからない。

それでも必死に考えて考えて、また報告に行く。

すると、またけちょんけちょん。

これを何回も繰り返すので、こちらのストレスも限界突破、身も心もへっとへと。

そこをぐっとこらえてリトライすると、何度目かにY部長の態度が少し軟化して、やっとアドバイスが具体的なものになる。

それを反映してやっとY部長のOKが出た完成形を見てみると…なんと最初の指示通りなのだ。

あのファーストオーダーをこちらが的確に理解していれば、ゴールまでの道のりは遠くなかったはず。

これにはマジで驚いたね。

ただ、こちらがポンコツなのもあるけど、それよりも何よりもY部長が頭よすぎるのよ。

頭よすぎて何言っているかわからない。

これは私だけでなく部署全員の共通認識。

彼を悪く言う人もいたし、私も仕えてしばらくは精神的な苦痛で本当につらかった。

だけど仕事だしね、がんばったわけよ。

すると、ある時期を過ぎてからはY部長の意図するところが読めるようになってきて、やり直しの回数が減ってきた。

いまだにけちょんけちょん状態の同僚がいる一方、周りから「Y部長、〇〇さん(=私)への態度が変わってきたね」と言われるぐらい変化は顕著だった。

部下を絶対にほめない人だと思っていたのに、結果を出して「よくやった」と言われたときは、うれしいが1%でサプライズが99%。

あまりの驚きに何を言われたか理解できず、しばらくポカーンとしていたくらいだ。


役員でもあるY部長の元には前の職場で一緒だった部下たちがやってくるのだが、その人たちとは談笑しているので、「ここでもそれぐらい愛想よくしたら?」と思ったりもした。

その元部下たちがみんなそろって頭脳プレイヤーズ。

頭のいい人と話せるのは、やっぱり頭のいい人だけなのよ。


あの1年間でものすごく成長したという思いはあるけど、もう会いたくはないなあ。

話すだけで疲れるからさ。



「オッペンハイマー」を観て、ノーラン監督とY部長に同じものを感じた私。

Y部長に会うことはもうないけど、ノーラン映画はこれからも期待度MAXで観続けていきたい。

変にわかりやすくしなくてもいいよ。

たとえどんなに難解でもがんばってついていくから。


頭のいい人が問題解決をする前に考えていること
頭のいい人が問題解決をする前に考えていること下村 健寿

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