不完全燃焼のまま定年退職した、仕事一筋老人の悲哀を描いた本を読んだ。

内館牧子の「終わった人」だ。



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大手銀行の出世コースから子会社に出向。転籍させられ、そのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?
(本の帯より)

主人公の思考回路が、セミリタイアした私とまったく逆なので、共鳴するつもりははじめからなかった。

はっきり言えば、仕事を取れば何も残らない老人の生き方を笑い飛ばしてやろうという、サディスティックな期待があったのだ。

明日からどうするのだろう。何をして一日をつぶす、いや、過ごすのだろう。
「定年後は思い切り好きなことができる」だの、「定年が楽しみ。第二のスタート」だのと、きいた風な口を叩く輩は少なくない。だが、負け惜しみとしか思えない。それが自分を鼓舞する痛い言葉にしか聞こえないことに、ヤツらは気づきもしないのだ。
(P1)

これは、小説の冒頭に出てくる主人公の独白。

この一文だけで、「かわいそうな人だなあ」と、つい憐れんでしまう。

仕事が好きなのはいいことだが、それを唯一無二の価値観だと信じてそれ以外の生き方を見下しているところが、人間として貧しくてかわいそうなのだ。


そんな狭い考えで幸せなセカンドライフが過ごせるはずもなく、この男はプライド蟻地獄に自ら落ちていく。

働く妻から鬱陶しがられながらも、周りの老人コミュニティをバカにして近づかず、それでいて充実した毎日をおくっているふりをする。

そして、啄木の「こころよき疲れなるかな 息もつかず 仕事をしたる後のこの疲れ」という歌に自分を重ねて、ひとり浸っている。

こういう老人になりたくないからこそセミリタイアに踏み切った私には、本当に痛々しいばかりだ。


しかし、世の男性には共感の嵐が吹きまくっているらしい。

「最初からぐいぐい引き込まれた。主人公の気持ちが痛いほどわかる。才能とは何か、生きる意味とは何か。余生を考えさせてくれる好書だった」(50代男性)
「世の男性、私自身を見透かされているようで、一気に読みきってしまいました」(40代男性)
「書かれているのは自分のことかと思った。内館氏ならではの鋭い視点と人間観察力に脱帽!」(60代男性)
(本の帯より)

見方を変えれば、「一生仕事がしたい!仕事こそが自己実現の唯一の道だ!」と思う人々が、今の日本社会を支えているのだ。

こんなセミリタ中年独身男に、上から目線で「ざまーみろ」などと言われる筋合いはまったくない。

定年退職すると「終わった人」になるのなら、セミリタイアした私など「もっと早くに終わっちゃった人」でしかないんだから。


本書も、私の病んだ期待に応えてくれたのは最初の方だけで、途中からはドラマティックな展開が続いていく。

もっと溜飲を下げられるかと思ったのに、読み終わってみれば、普通に面白い小説であった。

すべての男性にご一読をオススメしたい一冊である。



読み終わってから知ったのだが、この本、映画になるらしい。

【終わった人 特報】

原作よりもずっとコメディ色の強い作品になっているみたい。

主人公が舘ひろしだと色気過多な気がするけど、枯れた味をうまく出しているので、案外いいキャスティングかもしれない。

6月9日公開なので、観に行ってみようかな。

試写会に当たるのがベストなんだけどね。


終わった人
終わった人内館牧子

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