(「読書に目的は必要か?役に立たない読書は無益か?」の続き)


読書のスピードアップを果たすべく、昨年末、関連する本を3冊読んだ。

1冊目2冊目に引き続き、今日は最後の一冊について書くことにしたい。



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その本は、2006年に発刊された「本の読み方 スロー・リーディングの実践」で、著者は芥川賞作家の平野啓一郎氏。

前2冊は速読を前提にしていたのだが、「年600冊」とか「月100冊」とか、実際にはまねのできない読書量だった。

そこで、まったく逆の考え方の本を読むことで、多面的なアプローチを目論んだのだ。



作家の立場からすれば、精魂込めて書き上げた作品を、雑な読み方で一気に読破されるのは、いい気持ちがしないはず。

それゆえ本書でも、巷にあふれる速読本をメッタ斬りにしている。

一ヶ月に本を100冊読んだとか、1000冊読んだとかいって自慢している人は、ラーメン屋の大食いチャレンジで、15分間に五玉食べたなどと自慢しているのと何も変わらない。速読化の知識は、単なる脂肪である。(中略)それよりも、ほんの少量でも、自分が本当においしいと感じた料理の味を、豊かに語れる人のほうが、人からは食通として尊敬されるだろう。読書においても、たった一冊の本の、たったワンフレーズであっても、それをよく噛みしめ、その魅力を十分に味わい尽くした人のほうが、読者として、知的な栄養を多く得ているはずである。
(P34-35)
端的に言って、速読とは、「明日のための読書」である。翌日の会議のために速読術で大量の資料を読みこなし、今日の話題のために、慌ただしい朝の時間にざっと斜め読みする。
それに対して、スロー・リーディングは、「五年後、十年後のための読書」である。
それは、今日、明日という即効性があるわけではないが、長い目で見たときに、間違いなく、その人に人間的な厚みを与え、本当に自分の身についた教養を授けてくれるだろう。
(P35-36)

過激な物言いをのぞけば、私も著者とほぼ同意見だ。

ここまでスパッと言い切ってもらえると、清々しさを感じるね。


これには、「それは本の種類にもよるだろ」という、まっとうな反論もあるだろう。

でも、そもそも情報や知識を仕入れることが目的の読書を、果たして読書と呼ぶのか?という素朴な疑問が私の中にあるし、きっと著者もそう考えているんじゃないかな。

私の場合、子供のころの読書は作家が創作した物語ばかりで、それ以外の本を読むようになったのは、いい大人になってから。

だから、ビジネス本や自己啓発本しか読まない人が「趣味は読書です」と言うことに、ちょっとだけ違和感があるのだ。

世の中には、マンガまで読書の範疇に入れている人もいるくらいだから、これくらいは気にしていないし、私もセミリタ奨励本を読んで、読書数にカウントしている。

でも、読書の基本はやっぱり小説でしょ、という気持ちは、確実にあるのよね。



そして、その小説は、速読術ときわめて相性が悪い。

何も考えずに文字だけ追っていれば楽しいという小説もあるだろう。しかし、名作といわれるもののほとんどは、そうした読み方では、十分に魅力が理解できないものだ。(中略)
では、なぜ、小説は速読できないのだろうか? それは、小説には、様々なノイズがあるからである。
(P44)

著者はこのノイズを、「一見どうでもいいような設定」「情景の描写」「主人公のほんの些細な仕草」などと表現している。

ただストーリーを語るだけなら必要のないこのノイズが、小説に奥行きと感動を与えるための重要な要素だというのは、本読みなら説明されなくてもわかる話だろう。

確かに、速く読むことに気を取られて、巧妙に仕組まれた大切な伏線を見落としたなら、まさしく本末転倒。

意味のない読書をしても、時間を無駄にしただけになってしまうもんね。



しかし…しかしだ。

著者の提唱するスロー・リーディングを実行していると、死ぬまでに読みたいと思っている本の10分の1も読めずに、人生を終えてしまいそう。

ゆっくりじっくり丁寧に読んでいたら、2,000冊の蔵書は一向に減らないだろう。

それはそれで困るのよね。



最終的に、懸案の読書のスピードアップ問題は、

読書の快楽を味わいながら、できるだけ速く読む

という結論にいたった。

…うーん、何にも解決していない気がする。


セミリタイアの特権を活かして、死ぬまでにできるだけ、読みたい本を読む。

結局、それしかないですね。


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