実娘殺人を裁く裁判員裁判の判決が、昨日出た。

16:30からの開廷だったが、今回も1時間前に到着した。

開廷直前には長い行列ができたものの、ちゃんと入ることができた。

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2016021701

16:30、時間通りに開廷し、すぐに判決に入った。

検察側は13年、弁護側は5年を求めた本件だが、結果は懲役12年で、検察寄りの判決となった。


まず、弁護側が主張した心神耗弱については、精神疾患を示す医的な診断が過去に一度もなく、あっさり却下。

その他の状況からも、完全責任能力があると結論付けた。


その上で、被告人が自殺しようと考えたのは、自分の金銭感覚のなさが原因であり、それに娘を巻き込んだのはまったく身勝手な行為と断罪。

自身の責任にしっかり向き合っているかどうかも疑問であるため、12年という判決になった。

言われてみれば、納得の結果であった。


2~3歳程度の知能しかない自閉症の娘を殺したということで、最初は「疲れちゃったのかな」と思った。

しかし、話を聞いてみると、状況は全然違った。

42歳の娘は非常におとなしい性格で、面倒は全然かからない上に、平日は施設に預けられていて、家に戻ってくるのは週末だけ。

だから今回のケースは、介護疲れによる殺人などとは、話がまったく異なるのだ。

証人台に上がった、被害者の担当だった看護師の言葉が胸を打った。

「被告人は、自分が死んで娘がひとりになったらかわいそうだから殺したと言うが、それは違うと思う。障害の有無なんて関係なく、殺すなんてありえない。娘さんは、『なんでお母さんは私を殺すんだろう』と思っているはずだ


それでも、弁護人による被告人質問を聴いていると、知的障害の子を持つ親の気持ちが伝わってきて、とてもつらかった。

自分が死んだあとの娘の将来を不安に思うのは、当然のことかもしれない。

午前の弁護人からの質問が終わって、後ろに座っていたおじさんが、「他人事じゃないな」とボソッとつぶやいていた。

しかし、午後の検察からの最初の質問で、同情的な雰囲気は一変した。

検察:なぜ自殺したいと思ったんですか?
被告人:生きていたくなかった。疲れました。
検察:借金が原因じゃないんですか?
被告人:そうですね。
検察:お金のことで将来が不安になった?
被告人:はい。

被告人は、年収が1,000万以上あったご主人を早くに亡くしたあとも、散財生活をやめられず、パチンコ店に入り浸っていた。

働きもせず使うばかりなので、それなりにあった財産は底をつき、ついには借金までするようになった。

娘の成年後見人になると、娘の財産と自分のお金の区別がつかなくなって使い込み、のちに後見人となった弁護士から訴訟を起こされる始末。

その裁判にも出頭せず、問題をどんどん先送りにした結果、借金もふくらんでしまい、全部いやになって自殺したくなったのだ。

そして、そこに娘を巻き込んだのが、今回の事件だ。


検察による被告人質問の最後には、こんなやりとりが行われた。

検察:娘さんをひとりにしたくなかったというが、施設に預けていた時間の方が長い。言っていることが矛盾していないか?
被告人:だけど、置いていけなかった。
検察:それは、あなたのエゴじゃないですか?
被告人:…そうです。

もしも被告人がいなくなったとしても、娘さんは一生施設で暮らすことができたようだ。

なのに被告人は、「娘を置いていけない」という思い込みで、無理心中をはかった。

裁判長は、「知的障害はあっても平穏に生きてきた娘さんの人格を軽んじ殺してしまう身勝手さ」と被告人を一刀両断していたが、まさにその通りだと思う。


しかし、この判決を受けても、被告人が考えを改めるとは思えない。

事件の直後、被告人も自殺を図っていたのだが、妹の通報によって警察に助けられている。

これに対して、被告人はこんなことを言っていた。

「妹に電話をしなければよかった。そうしたら2人とも死ねたのに。今は殺人犯と言われてつらい。自分は間違っているとは思わない

この期に及んでも、まだ大きな過ちに気づいていないのだ。

この闇は、思った以上に深いわ。



この事件の原因は、娘が知的障害者だったことではなく、被告人がお金にルーズだったことだ。

私も、無職で資産を減らす生活を送っているところは被告人と共通しているけど、こんな類の事件とは無縁だと思っている。

しかし、世の中どこに落とし穴があるかわからない。

あの被告人を反面教師にして、帯を締め直そうと思った次第だ。


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